同じものを見ていても、人によって見え方、考え方は異なる
「ものの見方」オンライン白熱授業より抜粋
https://diamond.jp/articles/-/15552
これを知ったのはおそらく10年以上前に、川村透さんの書かれた書籍『答えはいつも、自分の枠の外にある!』(ダイヤモンド社)を読んだことがきっかけです。
初めて目にしたとき、すごく一生懸命考えたのですが、最終的に答えはわかりませんでした。
答えは『マグカップの中に自分が小さくなって入り、上を見上げた状態』です。なかなか発想できないのではないでしょうか。
僕は答えを知って「こういう考え方ができるんだ」という驚きがあり、一方では、柔軟な発想は若いからできるのか、それとも年を重ねていくことによって「こういうものだ」という、何か自分の中での決めつけが発想力を乏しくしているのか、などと考えてしまいました。
当時の僕の場合、「同じものを見てるから相手も同じように見えているはず」と決め付けが入ってしまいがちだったのですが、やはり人によって見え方や考え方というのは異なっているのだな、と改めて理解したのです。
それと「やっぱり多面的に物事を見れる柔軟さは重要だ」と再認識し、今も大切にしています。
自分と異なる意見が出たときにその意見を排除をするのではなく、「そんな見方もあったんだね!」と受け入れられるようになりました。
自分とは違う物の見方、視点を持ってる人が、側にいてくれることをありがたいと感じられるようになったのです。
周りがYesマンばかりだったり、自分と同じ意見・考え方ばかりだったりすると、確かに楽な部分もあるのですが、じゃあ仕事や物事がスムーズに上手く進むのかというと、実際はそうではない気がします。
また、自分と違う考え方を伝えられたり、自分が気づいていなかったことを伝えられたときに、「なるほど。そういう見方もあるんだね」と言える経営者、経営幹部がどれくらいいるのかな、とも思います。
例えば、相手の方が自分より権威があったり、売上がずっと大きかったり、経営者としての先輩だったりなどであれば、聴く姿勢を作ることができると思うのですが、自分の会社の社員とか後輩からの指摘で素直に聴ける人は、なかなかいないのではないかと思うのです。
例えば、とりあえずは聴こうとするけれども自分の意見とは異なる、あるいは聴く価値がないと思った瞬間にシャットダウンする、話を遮って自分の意見を被せる、といったことをしてしまいがちのように思うのです。
経営者の方はやはり圧倒的に優秀ですし、自分が会社を引っ張っていかなきゃという責任感もある。
当然、いい人過ぎてもうまくはいきません。ときには厳しい、きつい判断をしなければいけない場面も多々ありますから、なんでもかんでも受け入れてしまうと、それはそれで疲れてしまうこともあります。
また、会社が大変なときやトラブルが起こったときには、たいてい経営者の方が孤軍奮闘して、何度も何度も乗り超えられてきたと思うのです。
しかしその反面、そういった孤軍奮闘による成功体験の積み重ねが、ものの見方や考え方を狭くする要因にもなってしまうのでは、とも考えています。
自分と異なる意見を最後まで聴いてみる
では、相手の立場になるという考え方と、自分の考え方のどちらを優先した方がいいのでしょうか。
確かに経営指南書には「相手の立場になって考えましょう」という表現がよく出てきます。
確かに人を引っ張っていく上では「〇〇さんって、毎回言っていることが違うよね」「いつもみんなの意見を聴いてから、折衷案で収めるよね」という人よりも、「〇〇さんは、一本筋が通ってるよね」という方がついてきてもらえそうです。
ただ、「一本筋が通っている」というのと「人の話を聴かない」「他人の見方、考え方を理解しようとしない」というのは、少し違うような気もします。
また、会社の状態や経営者の方の年齢による要因も、大いにあると思っています。やはり20代30代のときはエネルギーもパワーもものすごくあるので、反対意見があっても情熱と勢いで進めていくと、そこに運も呼び込むことができて、成功へ持っていきやすかったと思うのです。
自分の直感を信じて行動すると、やればやるほどうまくいく時期がありますよね。
そのような時期には、なかなか他人の意見を素直に聴くのは難しいのではないかと思います。
それでも、ある程度年齢を重ねて体力的に衰えを感じるようになったり、無理を続けた反動で何度も病気になったりすると、少しづつ周りの意見を聴けるようになってくる、というのはあると思います。
家庭でも子育てが一段落してから奥さんの話に耳を傾けられるようになった、というのはよくある話です。
ですが、本当は若いときから自分と異なる意見も素直に聴ける、というのが理想ですよね。
例えば、自分の会社や工場、店舗などで従業員から「社長、ちょっとお時間をよろしいでしょうか」「ここはこうしたらもっと上手くいくんじゃないかと思いまして」「実は、この工程のこの部分で困っていまして…」などと伝えられたシーンを想像してみてください。
あなたは普段どのように接しているでしょうか。
かつての僕は「あぁそう。じゃあ〇〇さんに言っておいて」「それは〇〇さんに任せているから」「だったら君がやってみて、後で結果を教えてよ」などと対応していました。
忙しいときは特にそうで、他の従業員に振ったり、話を遮ったり、優先度を勝手に下げて後回しにしたりしていました。
ですが、今になって考えてみますと興味・関心を持ってしっかりと耳を傾けたい、と思うのです。
従業員にとって、経営者に何かを伝えるというのはものすごくエネルギーのいることですし、エネルギーを使ってまでも伝えたいこというのは、その従業員が実現したいことだったり、業務上の大きな問題だったり、改善したりしたいことが隠れている可能性が非常に高い、と思っているからです。
つまり、経営のヒントの宝庫です。
例えば、部門長や工場長、販売主任の方などその部門のスペシャリストの方は、経営者が接していない方々とたくさん接していますし、経営者の知らない現場の出来事や情報を持っています。
そして立場上、まじめな方が多いですし、任された部門をより良くしようと常に考えているはずですから。
だから今は「それってどういうこと?」「どうしてそう思ったの?」「そのアイデア面白いね!」などと、忙しい中でも興味・関心を向けることが重要なんだとわかってきました。
その意見を常に採用する、すぐに取り入れるというわけではないですが、従業員にとっては採用されることよりもはるかに「自分の話を聴いてもらえた」「現場の状況をわかってもらえた」などのほうが重要で、聴いた後の担当者の表情がぱあっと明るくなるのです。
それを続けていくと社内にいろいろと化学反応が起こり始めるので、長期的に見ると圧倒的に経営がうまくいくと思っています。
段階的に『聴く』というコミュニケーションを実践してみる
もう一度、マグカップの絵を思い出してください。
Cさんが現れ、自分とは異なる意見を伝えてきました。
その時に僕が実践していることは、下記の3つです。
1. どうしてこの人はそんな見方ができるんだろう(興味・関心を持つ)
2. エネルギーを使って伝えにきてくれたんだ(自分も優先度を上げる)
3. しっかりと耳を傾け、話を聴いてみよう(向き合って背景まで理解しようとする)
3つの段階があるように思っていて、それぞれに壁があるように思っています。
だから、試してみたいと思った方は、客観的に自分がどこの段階まで進んだかをイメージしてみるとわかりやすいです。
もしよかったら、このマグカップの画像を見えるところに貼ってみてください。
従業員から「社長ちょっと…」と話が出た際に、この画像を見て「興味・関心を向けてみよう!」と思っていただけたら嬉しいです。
きっと、社内がより活性化し信頼関係がアップすると思います。